みその原料 麦のコト
麦は麦麹になってみそに使われます。
だけど、麦ムギと聞いてアレルギーのある方だと気になるかもしれません。小麦アレルギーだと麦みそは食べられないのでしょうか?
答えは「食べられます!」
麦麹の麦は小麦ではありません。
使われているのは大麦類です。
とはいえ、アレルギーのある方は必ず食品表示を確認してくださいね。
大麦にもいくつか種類があるので、それについてみていきましょう。
みそ用の麦麹には大麦、はだか麦
麦みそに使われる麦麹は、大麦類のはだか麦と六条大麦です。
日本で収穫されている麦には、小麦、二条大麦、六条大麦、裸麦といったイネ科穀物があります。
日本の農産物分類においては、生産量の多い小麦、二条大麦、六条大麦、裸麦(はだかむぎ)をあわせて4麦といい、この4麦についての統計を取っています。
そのため、漢方薬で使われるハト麦やシリアルに入っている燕麦(えんばく)、ライムギは生産されていても統計には入っていないのです。
この4麦は大きく分けて@小麦、A大麦類(二条大麦、六条大麦、はだか麦)となります。
小麦は小麦粉になってパン、うどん等に使われているのでなじみ深いですね。
みそに使われている大麦類はこのように分類されます。
大 麦 類
穂の形状 |
用途 |
||
皮麦 | 二条大麦 | ビール、麦焼酎 | |
六条大麦 |
|
||
はだか麦 | 二条はだか麦 | (あまりない) | |
六条はだか麦 |
|
大麦は大きく皮麦と裸麦と分けられるのですが、大麦の特徴として実と頴(えい 米のもみ殻に該当する皮)が取れにくいものと取れやすいものがあり、取れにくいものを皮麦、取れやすいものをはだか麦といいます。
二条大麦
主にビール生産用に栽培されており、ビール麦とも呼ばれています。
麦穂が2列になって実るので二条麦といわれ、粒が大きくそろっています。管理がしやすいため醸造用に使われるようになりました。
ヨーロッパで栽培されるオオムギの多くは二条麦です。
二条大麦の穂 |
二条大麦の玄麦 |
|
|
六条大麦
六条オオムギは、穂が6列に実ることから名づけられました。
下の画像でわかるでしょうか、立体的にぐるっと実っています。
六条大麦の穂 |
近影 |
|
|
二条と六条の穂の付き方は上から見るとこんなイメージです。
六条大麦は二条大麦に比べ粒が小さいですが収穫量が多く、食用に使われます。
麦とろご飯に使われる麦です。オオムギはかつて日本の主食用の主要穀物の一つでした。
また糯(もち)種があり、もち麦は六条大麦の糯種です。
1942年(昭和17年)食糧管理法による食糧管理制度のもと、大麦は小麦や米と同様に政府の管理下に置かれました。農家は公定価格で供出し、政府は米穀配給通帳に基づき配給していました。
はだか麦
頴(えい)が取れにくい皮麦に比べ、揉むだけで皮が簡単にはがれる品種です。
二条はだか麦と六条はだか麦とがありますが、二条はだか麦は六条はだか麦と二条大麦との交雑種で、品種が少ないためあまり使われていません。はだか麦といえば六条はだか麦をさします。
六条はだか麦の穂 |
精麦した六条はだか麦 |
|
|
食用にするのが簡単なため、東アジア、ヒマラヤ地方、アフリカ東北部などの大麦を穀物として食用にする地域では多く栽培されています。
六条大麦と同様、昭和初期には炊飯用に加工した押麦、挽割麦といった精麦で食用にされ、米の不足分を補完する主食の一つでした。
米飯が好まれるようになり、現在はみそ用途が多くなっています。
皮麦とはだか麦は、穎(えい)が取れやすいか取りにくいかの違い、とわかりましたが、麦粒の構造はどうなっているのか見てみましょう。
麦の構造
皮麦とはだか麦の構造は、大まかには右図のようになります。
外皮(穀皮ともいいます)の下は、果皮、種皮、糊粉層、胚乳となります。
糊粉層はアロイロン層またはアリューロン層とも呼ばれ、皮と胚乳をしっかり接着しています。
粒溝といって、外皮の内側の果皮の一部が種子の内部に食い込んでいる部分があり、精麦されると真ん中の黒い線になるところです。この線を黒条といい、ハカマとかフンドシと呼ばれます。
粒溝はまた複溝ともいいます。
麦みそになってもフンドシは残っているので「麦みそだ!」と見分けられます。
麦の構造や名称がわかったところで、麦の精麦と種類についてみていきましょう。
精麦と食べ方
ここでは、六条大麦と六条はだか麦の精麦についてです。
食用・飲用として形がわかる精麦ですね。
液体のビールは玄麦を発芽させた麦芽を使用するので精麦はありません。
大麦類の精麦
一段階目の精麦は、穎のついた麦の表面を削っていき、胚乳だけの粒とすることです。これで丸麦ができます。
麦粒 |
精麦方法 |
|
丸麦 |
外皮を向いて精麦したもの。 麦の胚乳部分。 |
近年は炊飯器の性能が良くなりましたが、丸麦は米に比べて煮えにくいため、それをさらに加工して食べやすくする二段階目の精麦がされており、それらが多く流通しています。
昭和初期にこの炊飯用に調理しやすく加工した精麦が流通するようになりました。
押麦、白麦(はくばく)、米粒麦です。
|
麦粒 |
精麦方法 |
押麦 |
|
精麦後、蒸気加熱してから圧篇したもの。 |
白麦 (はくばく) 切麦ともいう |
|
精麦後、黒条に沿って切断し、加熱圧篇したもの。 |
米粒麦 |
精麦後、黒条に沿って半分に切り、米粒状に剥いて加熱したもの。圧篇はされていない。 お米と同じ比重になるよう加工してあるので、炊飯の際に水に浮かず取り扱いやすい。 |
これらは精麦過程で麦粒の40〜50%は削り取られてしまい糠が残っていないので、米と違って洗わずに調理できます。
精麦して削り落とされた果皮、種皮、胚芽などは麦糠(むぎぬか)です。
小麦の糠は?(ふすま)ですね。
手作りみそで、自分で麦麹から作ろうとすると使う麦は本来は丸麦です。以前は一般的に手に入りにくかったですがwebショップで手に入るようになりました。
大麦類のその他の加工品
炒って粉に挽いた香煎(こうせん 麦焦がし、はったい粉ともいう)や、焙じて麦茶として飲用されるなど、日常的にも食用・飲用されています。
香煎 |
玄麦を焙煎後に挽いた粉。 関東では六条大麦、関西でははだか麦を使う。 |
|
麦茶 |
玄麦を炒ったもの。 皮麦が使われる。 |
近年ではシリアルや、大麦を使った洋菓子も増えていますのでこの限りではありませんね。