史料のなかの未醤ミソ未曽味噌みそ『大草殿より相傳聞書』

『大草殿より相傳聞書』

『大草殿より相傳聞書』にみる味噌の使い方

 

『大草殿より相傳聞書』は、『大草家料理書』とともに『群書類従』に収められている料理書で、飲食に関する作法や料理手順など180カ条が載っています。

 

『大草殿より相傳聞書』 

 …
一 初雁の時。御めしの時は。右のりうりたうべく候。自然又さかなてんしんのとき初雁いづる事あり。其時は味噌をばかつて入ず。白水と鹽計にて煮候。もちろんにだしあるべく候。すい口うはをきあるまじく候。上をきにもすい口にもふつけ一ツ入られべく候。汁のいれ物はかはらけ本にて候へども。時によりては茶わんも大さらなどもくるしかるまじく候。
 
 (中略)
 
一 すまし味噌にしろ水をあはせたるは。うはみしると云也。すましみそ一盃に白水小わん一ツああはせべし。かつほをすこしけづりにだしたるもの也。ふなのころもにに用る也。鯉にも用る也。
 
  (中略)
 
一 さい飯集養の事。本ばんに食を盛候。上の盛ものは包飯のごとし。是はさいもなし。汁もなし。たゞすめみそ計也。くいやうは替る事なし。さいしん有べからず。これは祝儀にはもちゐず。ひやしるはなんべんもあるべし。御酒御湯前のごとし。
 
 七月五日大草殿□□。
 
 (中略)
 
一 鹽にの事。先水を飯のわんにはかり入る也。かくしみそとて小皿一ツ程みそまたかつををこまかにけづり能すりあはせて。かみ四五枚かさね。すりたるみそをつゝみ。口をよくゆひ候て。又竹の葉のつとにまへのつゝみたるみそをいれ。よく上をゆひ候て水にてよくにる也。うをはうろこばかりをとり。ひれ一ツ二ツづゝかけて車切にして後。内をよく水のすむ程にあらいてしるにいれ。よくにあはせて。御座に参時一ばんのはかりたる水とうぶんに入候。一ばんより酒を入にる事わろく候。すい口はゆの葉又ははじかみをうすくへぎても用る也。自然之時はうはをきにはよめがはぎ。あちしや。是をさかいりして用ることもあり。
 
 (中略)
 
一 さくらいりの事。先ずすましみそ一はいにすめみそすゑのかさ一ツづゝ合せて。能櫻にはくろいか又はたこ川すゞき。これを用也。すりへう口傳。すひ口は。ゆのは又は冬はさんせうのこ。こせうのこをも用也。又櫻のつぼみを花も同前さらのさきにかけて置也。
 
一 橘やきの事。先魚のみをいつものごとくすりて。むくろうじ程にまるめて。口なしをひたして。口なしのかすのなきやうにして。まるめたる魚をそめ候て。さて水に酒をすこしくはへにる也。其後橘の木を三寸ばかりにきりて。今の魚を小枝などくいなどにさして皿の内にいれ。又枝にさゝざる魚をも三ツ四ツ五ツ程下にいれたるがよく候。扨汁はすめみそ一はいに白水二はいいれて。それをにやしたてゝ。酒鹽能かげんにさして。今の橘やきの上にかくるなり。すい口はなし。
 
 (中略)
 
一 ふとにりうりの事。たわらこの本うらを切て。いかにも内の物をよく取てあらひ候て。山のいもをおしいれ候。自然山のいもなき時は。くずにみけし又もちのこめのこ抔をまぜてこねて。たわらこの中におしいるゝ。扨なはにてまき候へば。たはらこいたみ候。あひこかへしにていかにもゆひて。一ばんすめのすめみそにて能煮候。扨取いだしさめたる時。きりやうは車ぎりにも又はなびけても切て取也。
 
一 くろにの事。まづくろ物の内にかぢめを敷て。其上にあふびを入て。又其上にかぢめをふたにして。すめみそにていかにもよくに候。かぢめなき時はをこひじきにてもあれ。かぢめの名代にいるゝ也。さように候へばくろく成候。明日の客来ならば宵より煮候。あふびも先煮候て。又すめ味噌にていまのごとくにる也。扨切候へば中はしろく。まはりはくろし。それを切様はすぎもりになるやうに切べし。しぜんあへてもいだす事あり。其時はけしともちの米をいりて。湯にてほとばかして。扨いかほどもすりけしほどもかすのなきやうにすりて。酒鹽ばかりにてあゆる也。しほなどは入候まじく候。自然からみ入候はばはじかみよく候。
 
 (中略)
 
一 河うそうけみいりの事。やきやういかにも能焼て。毛の一ツもなきやうにやくべし。うそをやき候時。石を二ツ三ツも火にくべてをき。うその腹をたてにわりて。わたをとりいだし。腹の内水を打候へば。腹の内のかぐさき事もうせ候。其後腹の内の石を取いだしこぬかを入て内外をよくあらふなり。うそのつくり様は。うそのなかりのごとくまさめにつくり候へば。すいく候。つくり候ながさは三寸四寸程につくる也。つくりたるを其のまゝさかしほにつけてをく。又しるの仕様はすましみそ一はいにすめ味噌小わん一ツいれ。かつをとけしとを布の袋に入て煮だし。取あげて能時分にうそを入候。うそのうはをきには。牛蒡を四の一寸程にうすくへぎはりきりにしているゝ也。すい口はうそのをを車切にきりて。鹽と酒にていりて。其上にさんせうをすりて。それをさか鹽にてこねて。いまのうその尾の車切の上に置て。汁の上にをくなり。うその尾はをぐるまといふ也。
 
一 たんじやくまきの事。魚のかはを二寸程づゝに切。魚のみの方に鳥をすりて付。其上に青みをかぶせてまきて。其上にくずをうすくおしひらめて。まきたるたんじやくをまき。やがてゆでゝ能頃に取出し。水に付てひやし候。きりやうは兩のはしをすこし切。立にもわり候。又横になびかしにてきる事もあり。其時はあまたにはきらず一刀にきり候。うはをきにはくゝ立なづなをさかいりにして。此内一いろを用る也。又ふきしろうどわらび用る也。わらびなどきりやうも三寸四寸程にきる也。こしらへやうは。すめみそ一はいに白水三盃に又ふくさみそ一はいに合にべし。たてたんざくまきを入候時分にさかしほ少くはへ候。すい口はじかみをすりて用る也。
 
 (中略)
 
一 ふへまきしるは。かまぼこのごとくちと鹽を入する也。扨しやくはち竹程の竹につけて。いかにも能煮て。扨にへたる時水にてひやし。竹をぬきてはす切にも車切にもきる。又しるの仕様は。すめ味噌一はいに三ばんとぎの白水を二はい合て。又かつををけづり。布の袋に入煮だし候てする也。袋を取上ゲふへまきをいれにるべし。其うはをきは時分によりせりのねがちに葉のかたを懸て。四寸にも五寸にも切て。酒いりにしているゝ。又時によりはぎなを今の様にしていれべく候。又たんざくこぶをばいつもの糸さんざくの事口傳にあり。又酒いりは鹽をいりてさけを入。其酒三分一水を入てする也。又吸口は柚の葉いつも入る也。冬はこせうはじかみ。酒鹽はすこしさす也。

 

 『群書類従 第十九集 管弦・蹴鞠・鷹・遊戯・飲食部』(續群書類従完成會)より

 

味噌を入れる料理指南は上記11カ条です。

 

主に「すまし味噌」と「すめ味噌」がよく出てきます。両者同じものを指すのかと思いましたが文中に「すましみそ一はいにすめ味噌小わん一ツいれ」とあるので別物のようです。

 

「すめ味噌」は今日一般的に聞く調理法ではありませんので「すまし味噌」との違いを探索中です。

 

参考に、料理の用語 すめみそをご覧ください。

 

 


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