味噌みそ と 史料『塵袋』

『塵袋』

『塵袋』 味曽ミソの説明

 

 

 

『塵袋』は、鎌倉時代中期(1274〜1281年)成立といわれるカタカナ書きの百科事典で、和漢の故事や言葉の意味など620カ条について、語源を随筆風に説明しています。

 

現存するのは、1508年(永正五年)に高野山の僧が74歳のときに書写したもの。重要文化財です。

 

巻一 天象・神祇・諸国・内裏
巻二 地儀・植物
巻三 草・鳥
巻四 獣・虫
巻五 人倫
巻六 人体・人事
巻七 仏事・宝貨・衣服・管絃
巻八 雑物
巻九 飲食・員数・本説・禁忌
巻十 詞字
巻十一 畳字 の11巻24部から成ります。

 

『塵袋』第九 飲食 員数 本説 禁忌
 
一 味曽
味曽ト云フハ正字歟アテ字歟
正字ハ末醤ナリ ソレヲカキアヤマリテ未醤トカキナス 未ハ搗抹ノ義也 末セサルハ常ノヒシホ末シタルハミソナリ コノユヘニ末ヲ用ルへキヲ字ノ相似タルユヘニ末ヲ未トカケリ 今ノ世ニハ未ノ字ニ口篇ヲクハヘテ味トカキ醤ヲハ曽トナシテアテ字ニナリタル様ナリ 醤ノ字ヲハヒシホトモアエモノトモヨム
 

『塵袋 下 日本古典全集之内』(日本古典全集刊行會)

 『覆刻日本古典全集 塵袋』(現代思想社)より

 

本文は縦書きの漢字片仮名交じりで句読点がありませんので、わかりやすくすると概ね下記のように味曽の説明になります。

 

〔おおよその意味〕
一 味曽
味曽というのは正字か当て字か。
正しい字は末醤である。それを書き誤ってしまい未醤と書きなす。未は偽物の抹の意味である。
末しない(粉にならない / 最後までいかない)のは通常のひしお、末したのは味噌である。それゆえ米を用いるべき字と似た字であるがために未と書いてしまっている。今の時代には未の字に口へんを加えて味と書き、醤を曽の当て字にしてしまっているようだ。醤の字は ひしお とも あえもの とも読む。

 

 

当時はみそを漢字で味曽と書くのが一般的だったようです。正しい漢字は末醤で、未醤を書き間違えて、さらに味醤の当て字で味曽にしている、と断じています。

 

 

『塵袋』 「御四種」 味曽・塩・酢・酒の四種

 

味曽の説明の次に、宮中の調味料のことが載っていました。

 

『塵袋』第九 飲食 員数 本説 禁忌
 
一 女房ノ中に酢ヲ御シスト云フ 心如何
御膳ニ四種ト云フ事アリ 味曽・鹽・酢・酒ノ四ナリ 此レヲバヲノゝゝ一器ニ入テマイラスベキナリ 今ノ世ニハ、四種カナラズシモ器ニイレズ。或ハタヾ四ノスミニ一ヅヽ器バカリヲオキテモアルベキニヤ 或ハ酒ヲ略シテ蓼モシハ山葵ヲイルベシト云フ人モアリ 又味曽モ蓼モカナラズ酢ヲ入ト云々 四種ニハ酢ノムネトアレバ、スト云ハンモヒタハダシノユヘニ、カクシ題シテ、スヲ御四種ト云フナルベシ
 
 

『塵袋 下 日本古典全集之内』(日本古典全集刊行會)

 『覆刻日本古典全集 塵袋』(現代思想社)より

 

〔おおよその意味〕
一 女房の中に酢を御しすという、心いかん
天皇の御膳に四種(しす)という事あり。味曽、塩、酢、酒の四つである。これをば各々一つの器に入れまいらすべきである。今の世には、四種を必ずしも器に入れない。或いはただ四隅に一つずつ器だけを置くのもあるべきだろう。或いは酒を省略して蓼もしくは山葵を入れるべきという人もいる。また味曽も蓼も必ず酢を入れる云々。四種には酢が主なので酢といおうにもあからさまなため隠語で酢を御四種(おしす)というのである。

 

 

味噌そのものからは外れましたが、供御に「おしす」といったら本来は味噌、塩、酢、酒の4種だったが、今(当時)は主に酢を指すけれど、ただの「す」ではあからさまなので「おしす」とあえて言っているそうです。

 

 


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