『御子柴くんの甘味と捜査』 若竹七海 | 小説に描かれる味噌みそ

みそと小説『御子柴くんの甘味と捜査』 若竹七海

『御子柴くんの甘味と捜査』 若竹七海

 

『御子柴くんの甘味と捜査』 (中公文庫)

 

 

女性作家の若竹七海(1963〜)による推理小説。

 

2013年4〜12月に中央公論新社のホームページに掲載されたもので、東京西部の調布市出身だけど山岳救助隊にあこがれて長野県警の警察官になった御子柴くんの事件手帖が5編収められています。 

 

「忘れじの信州味噌ピッツァ事件」という小編は、御子柴くんが長野県警から警視庁に出向してからの事件。

 

そもそもなぜ著者の若竹氏が、主人公の御子柴くんの勤務先を長野県にしたかというと、
「中央線で育った多摩の人間にとって信州は近しい。 (中略) それになんといっても信州は美味しい。…」

 

著者は東京都出身で、御子柴くんと同じ中央線の調布市出身のようです。

 

御子柴刑事が、出向先の警視庁で本名でもない「長野」と呼ばれるのはともかく、「スイーツ刑事」と呼ばれるあたり、事件に関係する土地の名物や土産物を紹介する匂いが。(笑)

 

警視庁捜査一課の玉森さんのセリフに、お土産スイーツの名称と説明っぽいセリフがいかにも、という感じで詰め込まれています。

 

信州味噌ピッツァは駒ヶ根ファームスの名物だそうで、建物2階で株式会社南信州ビールの運営する「味わい工房」で出されています。

 

薄いパリパリの生地にチーズ、そのうえに甘味の強い味噌が筋状に配され、さらに青ネギがちりばめられているだけ、というピッツァだ。味噌を使ったピッツァというのは珍しくないが、チーズと味噌、ふたつの発酵食品の旨みと風味だけをぞんぶんに味わえる、シンプルだけど贅沢な逸品??とは、御子柴の両親のセリフである。

 

そう、確かにみそとチーズは同じ発酵仲間で、おいしい組み合わせです。

 

味わい工房で確認すると、信州みそでつくった特製ソースがかかっていますが、赤みそを使っているのか、黒っぽい赤褐色をしています。

 

著者はあとがきで、
「…満足する一方、心残りもある。おやきをトリックに使えないかと知恵を絞ったが思いつかなかったし、わが調布市と姉妹都市である木島平村の美味しいトマトジュース『太陽の子供達』を登場させられなかった。まだ食べていない甘味もいろいろある。…」

 

またぜひ、スイーツ刑事こと御子柴くん事件帖の続編で、信州のおいしいものを紹介していただきたいです。

 


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