『非道の五人衆』 鈴木英治 | 小説に描かれる味噌みそ

みそと小説『非道の五人衆』 鈴木英治

『非道の五人衆 惚れられ官兵衛謎斬り帖B』 鈴木英治

 

『非道の五人衆 惚れられ官兵衛謎斬り帖B』 (祥伝社文庫)

 

 

鈴木英治氏(1960年〜)の時代小説。

 

江戸は北町奉行所の廻り同心、沢宮官兵衛の

 

麻布谷町の味噌醤油問屋的場屋の娘が、官兵衛に身辺警護の相談をするところから、平家落人の伝承宝刀の話までつながるスケールの大きな時代小説です。

 

要所に伏線がはられており、残忍な殺戮、企み、追跡の描写にハラハラしながらも、ほっこりするような恋の話も織り交ぜられ、あっという間に読めた1冊でした。

 

舞台となる的場屋のある麻布谷町は、現在の赤坂あたりの設定のようです。

 

的場屋は良質の味噌と醤油だけを扱う問屋で有名で、
「…江戸っ子がとみに好む、甘くて濃厚な味噌を売ることで財を築いたそうですよ。杜右衛門さんが最初に売り出したのは、京の白味噌と三河の八丁味噌を併せ持つような味噌だと聞いています」
「…的場屋さんの味噌は、とにかく麹が惜しむことなく使われているらしいんですよ」

 

なるほど江戸っ子は甘くて濃厚な江戸甘みそが好きなんですね。そして麹歩合が高い味噌は高級、とわかります。

 

ほかに、剣道場に一晩泊まった剣使いの神来大蔵に出された朝食は、
「主菜は鯵の干物で、あとは海苔とたくあん、わかめの味噌汁である。
『まことに豪勢にござるのう』」
とあります。

 

巻頭に簡略地図があるのと、品川、白金村、浜松町といったよく知られた地名と土地の様子が描写されているので、ビル街となった現代と思い比べながら読むのもおもしろいと思います。

 


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