『家族の勝手でしょ!』 岩村暢子
『家族の勝手でしょ!―写真274枚で見る食卓の喜劇』 (新潮文庫)
岩村暢子(いわむら のぶこ 1953年〜)氏によるルポルタージュで、2010年刊行。
現代家庭の "食卓" の現実をガチンコで取材。274枚の食卓のナマ写真が、家族の食事のありさまを写し出す。
食卓の生写真が毒々しい印象に感じるは、私だけでしょうか。
書籍や雑誌に掲載される料理の写真は、照明や角度、食器や背景にも細心の注意を払っておいしそうに綺麗に映し出すとともに、あこがれとなるライフスタイルを演出しています。そんな写真に見慣れていると庶民といわれる人たちの暮らしぶりを忘れてしまいがちですが、これらの写真は現実を突き付けてきます。
冷静な目で食事内容を眺めると、日本はこんなに貧しくなったのか…。
単純にお金の面というわけではありません。
スナック菓子、ペットボトル、パン、冷凍食品、インスタント、ファストフード。
出来合いのものを1品だけ食べる。栄養バランスは考えない。
皿も使わずティッシュペーパーや紙を皿替わりにする。
調理したがそのまま大皿代わりに食卓に上る。
子供がうるさくて昼食代わりにとりあえずお菓子を食べさせるのは午後2時頃。
子供が好むように子供に合わせているのか、親が面倒くさいのか。
味噌汁がない写真も多いです。
1椀の味噌汁を回し飲みするという親子。
味噌汁は毎日作るものではなく、気が向いたときに作るもの。作ったら2〜3日は冷蔵庫に保存して何度も温めなおす。
けれども味噌汁があると理想の献立と胸を張る主婦。
食卓や献立が "家庭のもの" というよりも、"とりあえず空腹を満たすもの" になっているのがものすごく恐怖でおぞましい。
食育は石塚左玄(1851〜1909年)が著書で説いたのを初めとしてマクロビオティックなどに継承されていますが、近年では2005年に食育基本法が制定され、有名シェフらも食育活動に参加しています。
手をかけて食事をつくる、ということができなくなった家庭。
味噌汁1杯の力が、その後の味覚にも健康にもつながるんですよ!大人でも子供でも。