洒落本「鯛の味噌須」大田南畝 | 味噌みそと洒落本

みそと洒落本「鯛の味噌須」大田南畝

「鯛の味噌須」大田南畝

 

 

『風流落噺 鯛の味噌須』は1779年(安永八年)に出版された滑稽本。
別名 四方赤良(よものあから)、大田蜀山人(おおたしょくさんじん)(1749〜1823年)は江戸天明期を代表する狂歌師、文人、そして徳川幕府の御家人。下級武士ながら47歳(1796年)で幕府の登用試験を受け首席で合格。勘定所に勤めた勉強家でもありました。

 

『鯛の味噌須』は、叙(序と同じ)、内題に「鯛の味噌津」、小噺が45話が続きます。

 


日々に新たにしてまた日に新たなる。はなしの種を買い出さんと。硯の海辺の市に立て。持たる筆を天秤となし。めったにうりたいはなしたい。鯛の味噌吸に四方山の。はなしにひれはなけれども。尾に尾をつけて書きつゞくれば。新しうこそ腥けれ。いでや世上の話本。新背もあれば古背もあり。古をたづねてあたらしき。譬のふしの鰹節。花に酔ぬる人ならで。桜の皮を削りはべりぬ。

新場老漁書

 

『大田南畝全集〈第7巻〉』戯作(洒落本・黄表紙・噺本)

 

鯛の味噌須に関する記述は「叙」の太字部分だけです。

 

この原文を読んでふと思い浮かんだのは映画「男はつらいよ」で香具師の寅さんが地方で啖呵売(たんかばい)するシーン。

 

第6作「男はつらいよ 純情篇」
 

「ケッコー毛だらけ猫灰だらけ、お尻の囲りはクソだらけってねえ、タコはイボイボ、ニワトリゃハタチ、イモ虫ゃ十九でヨメに行くと来た、…」

 

『男はつらいよ パーフェクト・ガイド ~寅次郎 全部見せます』 (教養・文化シリーズ)より

 

字面にするとはっきり言って意味も内容もないのですが、テキヤの寅さんが七五調の口上で掛けことばを巧みに使っています。

 

滑稽本もそんな内容で、会話調の文で言葉を引っ掛けて笑い落としたり、ときに?のマークが入っていて詠い詠む、庶民が気楽に読めたものでした。
ほかに南畝先生の滑稽本で『うぐいす笛』などありますが、タイトルもことばの洒落で、軽いノリの感性とセンスで付けられたタイトルのようです。

 

『鯛の味噌須』が発表された当時、大田南畝は幕臣になりながらも漢学など勉強を続け、世は田沼時代、狂歌師 四方赤良と号して狂歌の発表や狂歌会を催していました。

 


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