「味噌蔵」 | 味噌みそと落語

みそと落語「味噌蔵」

落語「味噌蔵」

 

 

 

「味噌蔵」あらすじ

 

屋号は吝嗇屋(しわいや)、名は吝兵衛(けちべえ)、商売は味噌屋。大勢の奉公人を使っているが女房を持たない。なぜ持たないかというと、女房を持つと子供ができる。子は食べ物を食べるから金がかかって困る、という有り様。それでも大店の旦那たるもの女房を持たないと、というので親戚たちが骨折って良い嫁さんを探して祝言となった。その晩も「都合があるんで二階で寝ておくれ。私は階下でやすみますから」と別々に寝ていたほど。しかしあるときひどく寒い晩、さすがに薄っぺらのせんべい布団に入っても寝付かれない。

 

「うぅ寒い。そういえば婚礼道具に綿がいっぱい入った布団をずいぶん持ってきていたねえ、ちょっとばかり温まりに行こうか」と毎晩温まりに行っているうちにおかみさんのお腹にあったまりのかたまりができてしまった。困った困った。番頭さんの入れ知恵で、生まれるまでおかみさんを郷里で預かってもらうことに。

 

無事に生まれたとの知らせで吝兵衛さんは迎えに行くことになったが、ここぞと喜んだのは奉公人たち。これまでご飯におかずはなし、売り物の味噌を使った汁はついても実なしの汁だけ。吝兵衛不在のうちに帳面をどがちゃがどがちゃがごまかして御馳走を食べようとなった。田楽は焼け次第、順に持ってこさせて、酢の物に塩焼き、刺身と酒宴でどがちゃがやってるとき、吝兵衛がひょっこり戻ってくる。あわてた番頭さんに「えらいことしてくれたねえ、赤い顔して。こんな時に火事でもあったらどうすんだい」。

 

そこで表の戸をドンドンとたたく音が。
「焼けてまいりました。横丁の豆腐屋から焼けてまいりました」「こりゃ大変だ、どのくらい焼けたんだい? 火足が速いな、戸を開けましょう」

 

表の戸をガラガラガラッと開けた途端に田楽味噌の匂いがぷーんときましたから、旦那さんもそりゃ驚いて「あぁいけねぇ、味噌蔵へ火が入った」。

 

『古典落語(選)』 (講談社学術文庫)より

 

 

原話は享保年間の笑話本『軽口大矢数』所収の「田楽取違え」。
けちを描く落語の代表作で、つねに寒さが中心になって進行していきます。

 

人口が密集した江戸の町では、火事は頻繁にありました。
出前で運ばせた田楽の焼けた味噌の香りと、火事で蔵の味噌が焼けた匂いを勘違いしたオチです。

 

 


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