『味のない味噌汁』 照井汐 | 小説に描かれる味噌みそ

みそと小説『味のない味噌汁』 照井汐

『味のない味噌汁』 照井 汐

 

『味のない味噌汁』

 

 

著者は心理カウンセラーで、35年間病気の妻を献身的に支える夫、和さんの実話。
この話は出版当時(2007年)も現在進行形で結末がどうなったのかは書かれていません。

 

結婚以来、病弱で派手好きで自分勝手な妻はまともな料理をしてみせたことがない。
和さんは男ながら母と同じように自分でも漬物はつけるし味噌汁もつくるけど、出汁を切らすこともあって味も覚えていない。

 

妻との暮らしの中で、家庭の味の記憶もあまりない和さんですが、植物人間のようになってしまった妻の入院先で知り合った優さんのつくる味噌汁を味わうことで、故郷岩手の実家の味噌汁、義母の味噌汁を思い出し、「味噌汁の味は家庭の味」と優さんと盛り上がります。

 

心理カウンセラーでもある優さんが著者のことか知人の心理カウンセラーかわかりませんが、妻の介護の中でも、生きる自分を取り戻し明るさを発揮できるようになる和さんが救いです。

 

おいしかった味噌汁の具を思い出して、きっと自分でも再現できるよう料理もするようになるんだろうな。そんなおいしい味噌汁を、誰かにつくってもらうようになるのかもしれません。

 


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