『いくつもの時間』 河野多恵子 | 随筆の中の味噌みそ

みそと随筆『いくつもの時間』 河野多恵子

『いくつもの時間』 河野多恵子

 

『いくつもの時間』

 

 

作家の河野多恵子氏(1926〜2015年)によるエッセイ集です。
1983年(昭和58年)刊行。女性の生き方、夫婦、暮らしの感覚や子供のことを描いたエッセイが38編収められています。

 

「夏のお清汁(おすまし)」に、郷里の大阪での味噌汁の記述があります。

 

郷里の大阪では、もともと味噌汁を常食にはしない。お正月の白味噌(京味噌)のお雑煮は別として、朝食にお味噌汁の習慣もない。お豆腐のお汁といえば大抵お清汁だし、たまにお味噌仕出しにしたり、若布(わかめ)やしじみのお味噌汁を作ったりするのは昼食の時。夕食のお味噌汁も時たまで、こちとか、おこぜの赤だしの時くらいのものである。テレビのお味噌の宣伝にあさりのお味噌汁が出てくることがあるが、大阪ではあさりは塩だけのお清汁に決まっていた。夏でも毎日朝からお味噌汁などということは、今でも私は苦手である。

 

読んでびっくりしましたが、大正15年(昭和元年)生まれの河野氏の味噌汁生活は、毎日飲むものではなく、たまに飲んでも昼食メインだったのです。かといってパン食という記述は見当たらず、汁物はもっぱらお清汁だったのでしょう。

 

河野氏は大阪市西区の椎茸問屋に生まれました。この食習慣が地域性のものか、実家ファミリー特有のものかわかりませんが、昼食でお味噌汁とは意外。あさりはお清汁というのも意外です。
通常お清汁に使う同じ二枚貝のはまぐりと同じような扱いなのでしょうか。

 

食習慣ももちろんですが、おみそ汁の具とみその組合せも参考になりました。

 


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