「味噌汁と図像学」 阿部賢一 | 随筆の中の味噌みそ

みそと随筆「味噌汁と図像学」 阿部賢一

「味噌汁と図像学」 阿部賢一

 

『ベスト・エッセイ』〈2014〉

 

 

日本文芸家協会によって編まれる『ベスト・エッセイ』の2014年版。

 

文芸春秋社『文学界』2013年7月号に掲載された「味噌汁と図像学」が収められています。

 

著者は、立教大学大学院准教授の阿部賢一氏(1972年〜)。チェコの最高学府カレル大学(プラハ大学)に留学経験があり、中東欧の文学・美術、表象文化論などを専門とされています。

 

チェコの美術史家ヤン・バレカ氏の図像分析を引き合いに、食卓での味噌汁の位置について、かわいらしい二人のお嬢様のやりとりがあります。

 

妹が茶碗を右に、味噌汁を左に置こうものなら、すかさず「反対だよ」と突っ込みを入れる。妹もすぐさま「だって、ミソシルがみぎだとこぼしちゃうんだもん」と言い返す。

 

確かに、当たり前のようにご飯茶碗が左、お椀が右と教え込まれました。
ウチの場合はお箸を右手で、お茶碗を左手で持って食べるから、という実用面での理由つき。右利きなのが当然として教えられました。

 

「おばあちゃんも、最近は右側に味噌汁があるとこぼすとよ、だからお茶碗と味噌汁を逆に置いとるけん、あかりちゃんも、味噌汁、左に置いてよかよ」。

 

これも確かに。お茶碗が左、と教え込まれたはずなのに、右にお椀があるとどうもお箸でひっかけそうで危なっかしい。いつの頃からか、自分のお膳は左にあるお茶碗のさらに左にお椀を追いやっています。

 

いつ頃から茶碗と味噌汁が左と右の定位置が一般的になったのか。一汁一菜が始まった鎌倉時代 ?? 著者のいうとおり、置かれ方は何かしら理由があったはずです。

 

味噌汁の置かれるべき定位置は別として、日ごろ時間に追われてしまって、大して噛まずに数分で食事を終えてしまう自分を思うと、お箸が泳いで右にあるお椀をひっくり返しても仕方ないようなせわしない食べ方をしているのかも。

 

食事は本来、作法としては食することに集中して、お膳と向き合って食べるべきなんだろうな。

 

図像学とはまったく関係ありませんが、ふと私自身の日ごろの食事への姿勢と食事中の姿を省みることになった随筆でした。

 


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