『手前味噌』 中村仲蔵 | 随筆の中の味噌みそ

みそと自叙伝『手前味噌』 中村仲蔵

『手前味噌』 中村仲蔵

 

『手前味噌』

 

 

江戸後期〜明治時代に活躍した江戸歌舞伎役者、三代目 中村仲蔵(なかむら なかぞう)(1809〜1886年)の自叙伝。

 

自叙伝のタイトルが『手前味噌』なのは、世襲が当然の梨園の世界で、まったく門外の家から名役者と言われ一門を率いるまでに登りつめた中村仲蔵の謙遜が込めらた自負心の表れだと感じます。

 

本書では実父母のなれそめから自分の生い立ちだけでなく、伝え聞いた初代 中村仲蔵のことから年代順に1873年(明治6年)まで。資料としても非常に貴重なものです。

 

記し始めたのは1855年(安政二年)46歳の時で、芝居の出番待ちに閑暇があったので鏡台の前で、自分の初舞台10歳の頃からを思い出して調べ上げ、また旅行の日記や見聞を書きつけておいたものを基として、興行の都度に書き継いでいったようです。

 

『手前味噌』は、当初『二葉艸』というタイトルで瀬川如皐(せがわ じょこう)(おそらく三代目。1806〜1886年)に名づけられ、その後四代目 桜田治助(?〜1897年)には『春風亭漫遊雑記』と名づけられましたが、『歌舞伎新報 523号』に連載するときに『手前味噌』に変わっています。

 

『手前味噌』と改題したのは仲蔵自身かそれとも『歌舞伎新報』編集者か、本当のところはわからないようですが、やっぱり手前味噌の意味からみても仲蔵自身の意図があったと思いたい、と思うのは読者が勝手に描く理想でしょうか。

 


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