大事な原料 米

大事な原料 米

みその原料 米のコト

 

 

食糧管理法が1995年(平成7年)に廃止され食糧法が施行されてから、民間流通米が流通するようになるとともに、消費者のし好の多様化に応じた品種改良で多くの米が市場に出るようになりました。
 
ご飯で炊いておいしい米は、照りや光沢、もちもちした食感などが基準になりますが、みそ用の米麹を作るには同じ米でおいしく作れるのでしょうか。
 
同じ醸造の酒にも酒米があるように、みそ麹に適する米があります。

みそ用の米麹には うるち米

米には うるち米のほか、もち米や同じ発酵と醸造の過程を経る清酒づくりに使われる酒米がありますが、みそに使う麹はうるち米を使います。

 

なぜうるち米の米麹か、というと…米への種付けとみその発酵過程とかかわりがあります。

 

麹菌の酵素

蒸し米に種付けされた麹菌(コウジカビ)は、増殖するために様々な酵素を体外に分泌します。

 

この酵素はプロテアーゼアミラーゼリパーゼといった酵素で、培地である蒸し米のタンパク質、でんぷん質、脂質を分解し、生成するグルコースやアミノ酸を栄養源としてさらに増殖していきます。

 

 

 

仕込みみそが発酵する過程では、麹菌の酵素が仕込みみそを分解していきますが、原料である大豆のタンパク質を分解する酵素、すなわちプロテアーゼが必要です。

 

 

 

うるち米 のタンパク質は、米の中全体に平均的に分散されているので麹菌も増殖しながらプロテアーゼを分泌するわけです。

 

なので、うるち米の米麹がみそづくり向き、となります。

 

こうしてプロテアーゼによって分解された大豆のタンパク質はアミノ酸になり、みそのうま味となるのです。

 

プロテアーゼ
 タンパク質のペプチド結合を切断する酵素。
 大豆のタンパク質を分解して分散性、可溶性を持たせる。

 

アミラーゼ(ジアスターゼ)
 でんぷんを分解してブドウ糖、マルトース、オリゴ糖に変換する。

 

リパーゼ
 脂質を分解する酵素。

 

一方、同じ麹菌で発酵醸造を経る清酒の酒米は、心白と言われる中心部分まで研磨し、研磨度合いが大きいほど吟醸酒、大吟醸酒となりますが、心白は炭水化物(糖質)の塊です。酒米は米の周辺部分にタンパク質が集まっている米で、研磨によってタンパク質は削り落とされます。

 

この心白部分(でんぷん質)を分解する酵素はアミラーゼ(ジアスターゼともいう)です。

 

清酒の原料は米麹と水だけですので、大豆などのタンパク質を分解する必要がありません。
清酒づくりにうるち米の米麹を使うと、タンパク質が含まれることになり、それが雑味になるため米のタンパク質は望ましくないのです。

 

ではうるち米でも、どのような性質のうるち米が麹米に適しているのでしょうか。

みそ用の麹米に必要な性質

 

製麹性、すなわち麹のつくりやすさが重要です。

 

なにより、麹菌の菌糸が蒸し米に根付く破精込み(はぜこみ)がよいことですが、それには蒸米吸水率粗たんぱく質含有率が関わります。

 

米は吸水させてから蒸しますが、蒸上りは外側がパサパサとしていて内側が柔らかいのがよいとされています。

 

さばけがよいといいますが、米の一粒一粒の全体に麹菌がつくのがよいので、粘性が高くて米どうしがくっついてしまうことがない、さばけのよい米がよいわけです。米粒が大きいのも製麹しやすい米です。

 

麹の専門店で原料米の品種を表示しているところでは、ゆめぴりかにこまるまっしぐら を挙げているところもあります。

 

他に、手づくりみそで米麹づくりからチャレンジするときは粘りの少ない品種としてきらら397がよいといわれています。品種を問わず古米古古米はでんぷん質が増えているので麹菌が繁殖しやすく、麹づくりによいといえます。

 

麹専門店も無農薬や有機栽培米など安心安全の米を使用しているところが多いのがうれしいところです。

 

自分で麹づくりからチャレンジするときは、温度管理のほか食事に納豆が厳禁など、難しい点は多いですが、納得できる原料を使うのも手づくりの醍醐味ですね。

 

製麹については 麹のつくられ方

 

米の種類 うるち米、もち米、酒米

みそ用の米麹は普段ご飯で食べているうるち米とわかりましたが、うるち米とはどういうものなのでしょうか。

 

食用の米にはもち米もありますが、両者の違いは含有するでんぷんの違いです。
でんぷんの性質で分けた名称が粳米(うるち)、糯米(もち)となります。

 

表にまとめてみました。
麹から始まり、同じ発酵醸造の過程を通る日本酒用の酒米も参考になりますので比べてみてください。

 

米粒

でんぷん特性

用途

うるち米

半透明。
 

アミロース20%程度
残りはアミロペクチン。

米飯
上新粉、ビーフン
せんべい
 

もち米

うるち米より丸みがあり乳白色。
 

 
成分は ほとんどアミロペクチン
粘りが出る。

赤飯、おこわ、ちまき
求肥粉、白玉粉、寒梅粉、団子
餅、おかき、あられ
 

酒米

米粒が大きい。(玄米)
 

心白と呼ばれる中心部分のでんぷん質が大きく、タンパク質が少ない。

日本酒
     

 
精米した米の成分はでんぷん質(炭水化物)が70%以上で、アミロースアミロペクチンの2つのでんぷん分子がほぼ占めます。

 

この2つの分子のバランスで、炊き上がりの粘りが異なってきます。

 

アミロースとアミロペクチンは分子構造が異なり、アミロースは熱水に溶けますが、アミロペクチンは熱水に溶けず分子同士が絡み合って水分を抱きこみます。そのため粘り気が出るのです。

 

もち米はでんぷん質のほとんどがアミロペクチンのため、粘り気が強くなります。
一方、うるち米は20%ほどはアミロースなので、もち米ほど米同士がくっつかず粘り気も少なくなります。

 

アミロースとアミロペクチンのバランスが米のおいしさのヒミツの1つと言われており、米の品種改良ではこの2成分と、硬さなどの食感、見た目の照りなどから米の特性を出していきます。

玄米も みその麹に使われる

みそに使われる米麹は精米した白米がほとんどですが、玄米も使われます。
玄米みそ は、コクがあって香りも豊かで、手づくりみそでも好んでつくる方が多いようです。

 

麹にも使われる玄米。精米の度合いによって、玄米→白米と呼称が変わります。

 

精米による呼称

米粒(うるち米)

精米歩合

籾(もみ)

稲から脱穀した種粒。

播種すれば芽が出る。

玄米

籾擦り作業によって籾殻を落とした米で精白されていない。
播種すれば芽が出る。
発芽させたものが発芽玄米。

五分搗き米

(ごぶづき)

 

玄米から胚芽も含めてぬか層を五分削ったもの。
精米歩合は96%

七分搗き米

(しちぶづき)

 

玄米から胚芽も含めてぬか層を七分削ったもの。
精米歩合は94%。

胚芽米

 

玄米から胚芽のみを残して、ぬか層を取り除いたもの。

白米

玄米からぬか層を約7〜10%程度削り落とす。
精米歩合は90〜92%。

上白米


 

精米歩合は90%。

 

玄米の周りのぬか層を削って白米になるんですね。

 

玄米といって思い浮かべるものは、玄米ご飯でしょうか。その玄米はうるち米の玄米ですね。
精米していない米が玄米ですから、当然もち米にも「玄米」はあるわけです。流通していませんけどネ。

 

玄米の栄養素についてはこちら

 

麹専門店での玄米麹は七分搗き程度まで削った玄米のようです。種皮が硬くて麹菌がつかないのですね。
また玄米みそ の醸造期間は、種皮が残っている分、麹菌の生育と発酵がゆるやかなので、米みそよりも長めになります。

 

ぬか層とか種皮とか出ましたが、籾殻を落として精米されていく米の構成ってどうなっているのか、みてみましょう。

米の構成

米をはじめとするイネ科の果実は頴果(えいか)と呼ばれ、もみ殻の下は硬い種皮と果皮が一体となって覆われています。

 

 

この一体となった部分が ぬか層で、ぬか層を取り除くことを精白、精米といいます。

 

玄米はぬか層がついている状態。

 

ぬか層をどの程度削るかで、三分搗き、五分搗き、七分搗きなどがあります。

 

 

 

 

 

五分付きではなく、五分搗きです。
餅を搗くの搗くです。杵で搗いて殻などをを除いたことから、この漢字を使います。
でも常用漢字ではないんです。

 

取り除かれたものが米糠(こめぬか)です。単にとも呼ばれます。
漬物のぬか漬けに使われます。

 

 

 

胚芽を残して精米すると胚芽米です。

 

さらに精米が進んで胚乳のみの状態が白米です。

 

ちなみに小麦の糠のことを襖(ふすま)といいいます。

 

 

 

 

せっかくなので醸造用の酒米についてもみていきます。

 

醸造用の米

麹米といわれ、農林水産省の農産物規格規定醸造用玄米に分類される品種です。
食用と同じイネ科のジャポニカ種が使われますが、一般米とは区別されています。
 

ジャポニカ種

 

インディカ種

 

日本型イネと呼ばれる。日本のほか朝鮮半島、中国東北部、台湾北部などでつくられる。
水分を多く含むため、炊くとふんわりと柔らかくつやが出る。弾力と粘り気がある。

 

タイ米、南京米と呼ばれる長粒種。

バングラディシュ、インドシナ半島など南アジアを中心に気温の高い地域でつくられる。

粘りが少なく、スパイスや油を使って調理されることが多い。

 

清酒は日本のものですから、原料の米だって日本の米、ですね。

 

醸造用の米は、ジャポニカ種の原種に近いと言われます。

 

ふだん食べている食用米は品種改良で台風に強く倒れないようにイネの背丈を低くしていたり、食べておいしく感じるように粘りや照りが出るようにしていますが、醸造用は稈長(稲の背丈)は高く、穂長(稲穂の長さ)も長いのが特徴です。

 

下の写真は、酒米の山田錦と食用の飯米です。
稈長の基準の地面が写っている写真を探しましたが、季節や撮影角度が違うので、左の酒米の稈長具合ががわかるでしょうか。

 

酒米(山田錦) 食用米

 

 

 

各道府県の醸造用玄米

各道府県では、醸造用玄米として下記の品種を産出しています。

産地(道府県)

品 種

北海道

 きたしずく、吟風、彗星

青森県

 青系酒一八四号、古城錦、華想い、華吹雪及び豊盃

岩手県

 ぎんおとめ、吟ぎんが及び結の香

宮城県

 蔵の華、ひより、美山錦及び山田錦

秋田県

 秋田酒こまち、秋の精、改良信交、吟の精、華吹雪、星あかり、美郷錦、美山錦

山形県

 羽州誉、改良信交、亀粋、京の華、五百万石、酒未来、龍の落とし子、出羽燦々、出羽の里、
 豊国、美山錦、山酒四号、山田錦

福島県

 五百万石、華吹雪、美山錦、夢の香

茨城県

 五百万石、ひたち錦、美山錦、山田錦、若水、渡船

栃木県

 五百万石、玉栄、とちぎ酒一四、ひとごこち、美山錦、山田錦、若水

群馬県

 改良信交、五百万石、舞風、若水

埼玉県

 さけ武蔵

千葉県

 五百万石、総の舞

神奈川県

 山田錦、若水

新潟県

 一本〆、雄町、菊水、越神楽、越淡麗、五百万石、たかね錦、八反錦二号、北陸一二号、山田錦

富山県

 雄山錦、五百万石、富の香、美山錦、山田錦

石川県

 石川門、五百万石、北陸一二号、山田錦

福井県

 おくほまれ、越の雫、五百万石、神力、山田錦

山梨県

 吟のさと、玉栄、ひとごこち、山田錦、夢山水

長野県

 金紋錦、しらかば錦、たかね錦、ひとごこち、美山錦

岐阜県

 五百万石、ひだほまれ

静岡県

 五百万石、誉富士、山田錦、若水

愛知県

 夢吟香、夢山水、若水

三重県

 伊勢錦、神の穂、五百万石、山田錦、弓形穂

滋賀県

 吟吹雪、滋賀渡船六号、玉栄、山田錦

京都府

 祝、五百万石、山田錦

大阪府

 雄町、五百万石、山田錦

兵庫県

 愛山、いにしえの舞、五百万石、白菊、新山田穂一号、神力、たかね錦、但馬強力、杜氏の夢、
 野条穂、白鶴錦、兵庫北錦、兵庫恋錦、兵庫錦、兵庫夢錦、フクノハナ、辨慶、山田錦、山田穂、
 渡船二号

奈良県

 露葉風、山田錦

和歌山県

 五百万石、玉栄、山田錦

鳥取県

 強力、五百万石、玉栄、山田錦

島根県

 改良雄町、改良八反流、神の舞、五百万石、佐香錦、山田錦

岡山県

 雄町、山田錦

広島県

 雄町、こいおまち、千本錦、八反、八反錦一号、山田錦

山口県

 五百万石、西都の雫、白鶴錦、山田錦

徳島県

 山田錦

香川県

 雄町、山田錦

愛媛県

 しずく媛、山田錦

高知県

 風鳴子、吟の夢、山田錦

福岡県

 雄町、吟のさと、五百万石、壽限無、山田錦

佐賀県

 西海一三四号、さがの華、山田錦

長崎県

 山田錦

熊本県

 吟のさと、神力、山田錦

大分県

 雄町、五百万石、山田錦、若水

宮崎県

 はなかぐら、山田錦

 

これらは酒米として使われることを第一として規定されているので、醸造用玄米となっています。つまり、清酒では吟醸酒など米を削る精米歩合の調整から行うため、玄米なのです。

 

 

 

米麹について調べていると「みそ用の米麹」という言葉に出会いました。
え?麹って用途ごとに細かく分けられてるの?? というところから始まり、菌が違うのか米が違うのか…。「醸造用玄米」を見つけて、これだ!と思いましたが、結局酒造用。
そりゃ貴重な酒米をみそには使わないか…。
逆に酒米に限らず、うるち米やもち米も酒造に使われるようです。
いや〜素人 δ(^ω^ )は迷走。ゼェゼェいってます。(笑)
でも勉強になりました。(^-^)


 


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